都市部から地方へ異動してくる上司へ、迎える下っ端から贈る言葉
異動の季節がやってきた
電器店へ行けば新生活応援フェア、マウスコンピューターさんも新生活応援キャンペーンを始めた今日この頃。
新生活の季節は異動の季節、ということで転勤の辞令が出た人はお疲れ様でございます。
さて異動してきた上司と言えば大体長ったらしい(そして半分ほどは自慢混じりの)訓示とかお説教とかを朝礼でかまし、左遷への不満なり出世街道へのやる気なりを仕事に発露していくもの。
そんな上司へ送りたい、面と向かっては言えない本音があるので、今日はそれを記事にしてみようと思う。
1.今までの経験は忘れるか書類ケースに突っ込んで押し入れにでも入れとけ
いわゆる『都市部でバリバリやってきた、やる気に満ちた社内の出世路線にいる上司』はだいたいこれを振り回して改革に勤しもうとする。
要はあれである、『冴えない成績のこの支社/支店/営業所を大都市部で培った経験を活かして改革してやるぜぇ!』というやつ。
お気持ちは大変よく分かる。
会社というのは結局、国営でもない限り営利に基づいて動くもの。
JRでさえそうであるのだからあなたがここへ来たということはそういうことも期待されているのだろう。
が、しかし。
恐らくあなたのその経験をぶん回すとかえって現場が疲弊するので、とりあえずその経験については忘れていただきたい。
迎える下っ端であるところの我々があなたに求めているものの第一はだいたいの場合そこにはないので。
例えば本社なりなんなり、我々下っ端からでは通らない予算設備その他もろもろの申請の意味するところを理解してスムーズにやり取りする能力。
例えば(色んな意味の)現場でなにかしらトラブルが起きたときに丸く収められる能力。
例えば人員を適切に配置出来る能力。
そういうもっと現場とか業務に即した能力を求めているのです。
田舎には都会脳の思いもよらないことが起きるということをまず理解してほしい。
何でうちの駐車場に馬糞が落ちてるんだって、それただのそれっぽく固まった田んぼの土ですよ。
2.あなたがプレイするゲームの種類は変わってるんですよ
東京のような各種会社の本社ひしめく土地から来たような人が理解しないことの一つが『ゲームの種類の変化』だと思う。
例えば池袋駅の周辺ではヤマダ電機とビックカメラがにらみ合っている。
交通の便もいいから数駅離れた(もっとも数駅での距離は田舎より断然短い)店との値段交渉だってやるだろう。
こういうところでの商いは『パイの取り合い』だと言っていい。
あるいはカリオストロの城でルパンと次元がスパゲッティの取り合いをしたようなあれだ。
ところで地方に転勤してきたあなたはまず周辺の同業他社の存在をサーチするかもしれない。
小売りや接客の人なら素知らぬ顔でお客として潜入調査するかもしれないし、そうでないなら取引先やら何やらを通じて情報収集するかもしれない。
それで『ここへ来る前と同じように』数駅先、あるいは車で移動できる距離にある同業他社をライバルとしてリストアップし、いかにここからスパゲッティの取り分を増やしていくかを考えるかもしれない。
だがちょっと待ってほしい。
一つここでお聞きするが、その中に『歩いてハシゴできる』同業他社はどれぐらいあるだろう?
さっきも言ったが『数駅分の距離』は都市部のそれよりはるかに長い。
『帰り道で一駅歩いてダイエット♪』とかいうダイエット特集にありがちな文言が鼻で笑われるレベルで長い。
なので同業他社ひしめくエリアとは必然的にお客の流れが変わる。
要は一か所、あるいは少ない所に集中する。
ということは、あなたがプレイするゲームは『パイの取り合い』よりも『わんこそば』の要素が強くなってくるのである。
わんこそば。
そう、いかにして殺到する敵キャラを捌くかという無双ゲームを、生身の人間がやらねばならないのである。
3.都市部みたいに自ユニット数が集まると思ったかバーーーーーーーーーーーカ!
OK、それなら人を雇おうとあなたは言うかもしれない。
交通費のあるなしはあなたの精神と会社のブラック度合いと年間予算の残りによるだろうけれど、シミュレーションゲームのように複数のユニットで一つの敵(ここでは仕事)にあたれば片付く速度は実際上がる。
集まればの話ですけど。
あなたの会社、交通の弁どうなってます?
駅直結?
職員用の駐車場がある?
駅からは遠いけどそれなりの頻度でバスがある?
近所に大学か何かがあってそこの学生をバイトで雇う、とかでもない限り、おそらくなかなか人は集まらない。
なぜなら根本的に通勤手段がないからだ。
駅から徒歩圏内なり何かしらの交通手段が確保できるなり、自家用車通勤ならその辺のカバーをしないと集まらないと思った方がいい。
そしてあなたはその少ない人数でわんこそばをこなさねばならない。
よっぽど暇なところでない限り、間違いない。
そしてここから自転車操業が始まる。
金銭ではなく人員の自転車操業である。
結果として現場の士気は右肩下がりになり、効率も右肩下がりになるだろう。
だって自転車操業に駆り出されてる間、元の職場の作業は進まない。
そして駆り出された先の人は『あなたここのスタッフじゃん』と当たり前のように考え、発言するようになる。
一度やったんだから出来る出来る頑張れ頑張れ任せるぞー、という闇の松岡修造の大量発生だ。
こうなると駆り出された側の人はたまらない。
『なんで上の無能のケツ拭いしたらこんなこと言われるようになってんだ?』
この無能な上司(つまりあなただ)と駆り出された先のなまけ癖(と駆り出された側は思うようになる)、あるいは『余裕があるから大丈夫』という認識は駆り出された側の苛立ちを誘う。
本来やるべき作業が進められないんだから無理もない。
そうでなくとも『いや何お前ら勝手に俺がケツ拭く前提にしとるんや、シバくぞ』という反感は産む。
ここから協力拒否の姿勢が生まれ、部下のやる気は波平の頭のごとくハゲ散らかしていく。
1.でも書いたけれど、改革しようというのならまず人員の自転車操業をやめろ。
しまいには有能な奴から転職していくことになるだろう。
まとめ:お前のやる気なんて俺らのやる気に相関性ねえから
もっと身もふたもないことを言うと、あなたの改革に付き合ったところで下っ端の給料が上がるとかボーナス増えるとかそういう利益は我々にはないんですよ。
差し入れとか利益のうちに入らないですからね。
それがあるんならもうちょっと無茶ぶりにも付き合いますが、そのために無茶ぶりされて他人のケツ拭わされるこっちの身にもなっていただきたい。
歴の長い非正規を正規にする、各種業務の予定を見直して今の人員で出来るように順序を作る、その他もっと出来ることがあるだろうと。
まあどうせ異動するまでの数年間の椅子だと思ってるからそんなこと考えもしないんでしょうけどね。