障害者相手の接客はつらいよ。
夏だ!お盆だ!戦争だ!!
と言っても原爆記念日的な意味での話ではなく。
お盆休みが近づいてくると、田舎の接客業は戦争の様相を呈してくるという比喩の話。
出勤さえすればポケストップが見つかるようなライトな田舎勢であっても田舎は田舎。
帰省する側ではなく帰省してくる人を迎える側と言った方が正しい土地柄。
この時期になると接客業と小売業はモンスターハウスに突入したトルネコか集魔の笛をハメルンの笛吹男のように吹き鳴らしながら歩くデビルサマナーのごとくお客さんとトラブルに全方面から包囲されているような様相を呈してくる。
というのも、帰省を迎える側っていうのは準備が大変なんである。
最たる例は酒。
なんせ次の日仕事とか心配しなくていいので飲み助大歓喜。
折角帰ってくるんだからちょっといいお酒飲ませてやろうと迎える側も奮発するので、缶ビールをケース単位とか瓶ビールをケースでとか、配送を請け負ってるところは結構忙しい。
同じような理由で食品関係も忙しい、というのがちかくの仕出しやってる寿司屋なんかが書き入れ時真っただ中なもので待ち時間がぐいぐい伸びるから。
鉄道関係なんてもはやいうまでもなく、盆休みど真ん中にノー予約でやってきて指定席を複数取ろうとするような世間知らずも大量生産。
大きな駅の中のコンセントのある飲食店などもはや居座って電車待ちをする旅行客やポケモンGOのためにスマホを充電するトレーナーなど、すでにしてカオスの様相を呈しつつある。
ドコモショップやauショップなんか充電器は常に満員御礼で、誰がカウンターの順番待ちをしていて誰が充電ついでに涼んでいるだけなのか客の眼からでは全く分からない。
お小遣いをもらってゲームを品定めする子供たちなどもはやなごみの対象。
電車で移動中に酒を飲んで酔っ払ったおっさんがバス停の日陰でおねしょしながら寝ている様を見てしまうと、だいぶ心の中の何かしらのボーダーラインが下がってくるのをひしひしと感じる。
そしてやってくる歩く無法地帯ども
さてそうこうしているうちにお客の中にトラブルの種が増え始める。
顕微鏡で細菌が増殖する様を早送りで観察している動画じゃあないけれども、気が付けば周囲に地雷原が敷設されている。
例えばスタッフが捕まらない。(全員他のお客様の応対中)
例えばレジが遅い。(中国人の団体が会計寸前になって内輪もめを始めた)
例えば座るところがない。(あるにはあるけど他のお客様で埋まっている)
例えば店内の子供がうるさい。(そこはさすがに我々のせいではない)
とまあじりじり一歩下がって地雷処理しようとすれば別のお客さんが背後から爆発物抱えて突っ込んでくるような、そんなスリリングな有様。
が、まだこんなトラブルは可愛い。
大抵の場合お客様は割と理性的である。
迷っている間にさっきは空いていた席が埋まっている、という新幹線の当日指定席争奪戦みたいな見えないところでの競争をやっているわけでもない。
しかし世の中には理性とか常識というものが一切合財通用しない疫病神系のお客も存在する。
そう、障害者とそのお身内様である。
なんせまあ、その。
譲られて当然、配慮されて当然、そういう思考で生きている人々である。
むしろ自分たちが法律ぐらいの勢いでやっている人々である。
彼らの場合、マイクラのクリーパーが集団で押し寄せてくるようなものなのでもうこちらではどうしようもない。
車いすの両脇に大量の荷物を括り付けて荷台代わりにするライフハックを披露した結果、順番待ちの列に並んでいた小さなお子様の身体に重たい荷物がクリーンヒット、とか。
障碍者手帳を振りかざしてエレベーターの中の人を全員降ろさせようとして、鼻で笑われてドアを閉められたからと店員捕まえて電波をまき散らすとか。
指定席が取れなかったからと新幹線の4号車自由席側に押し寄せて差額も払わず席を譲るように強制しようとして次の停車駅でつまみ出された車いすのデブご一行とか。
一部被害に遭った人のためにフェイクを入れております。
ここ最近で一番強烈だったのは、バス乗り場で暴れる車いすである。
田舎のバス会社というのは往々にして経営状態がよろしくない。
昇降客の多い路線を抱えているならまだしも、特に大型商業施設もないエリアだともう財布は常に火の車。
バス会社がなくなったらこまるという自治体から援助を受けていなければ多分もうバス路線はない、というところも結構ある。
そんなもうなくなっててもおかしくないような状態のバス会社をとっ捕まえて、
『ノンステップバスで運行してないなんて障害者差別だ!訴えてやる!』
『訴えられたくなかったらただで乗せろ!自宅の目の前まで送れ!』
『○日にも自宅前まで迎えに来い!』
と延々大暴れしていた車いすの女。
15分ほど過ぎたあたりで乗客が呼んだと思しきパトカーが到着。
その後連れていかれたが、一体どうなったかは知らない。
ノンステップバスをお気軽に導入するような余裕があれば自治体からの援助なんて受けてないわけで。
これだから都会慣れした障害者は貧弱なんだなあ、と友人に遅刻の連絡を入れながら思った。
ちなみに、介護タクシー(車いすで乗れるタクシー)を県内で展開しているタクシー会社も提供している。
空いている車さえあれば当日でも使えるらしいのだが、会社によっては介助料金なども(当然のことだけど)加算されるので使いたくなかったのだろう。
だからと言って警察呼ばれるまで暴れるとかお笑い種なんだけど。
身体障害者も怖いけど知的障害者も怖い。
本当にあった怖い話。
以前働いてたところっていうのが、周囲のお店より遅い時間まで営業してるところでしてねえ。
それで男性スタッフがたくさんいるもんですから、最寄りの交番にお巡りさんがいないときなんかよくお客さんが助けを求めてくることがあったんですよ。
今はもうそんなことないんですけど、喫煙所で吸殻を狙って集まってたホームレスに塾帰りの子供が絡まれてるようだ、とか。
学校の後輩がコンビニのそばで変な人に絡まれてるんです、とか。
交番の方が別の案件で出払ってるときもあれば、あわてて周囲を見回して「そうだあそこなら男の人がいる」って思いついてくる人もありで、まあ日常の一コマでしたね。
そんなことがなくても人の集まる施設ですから、こっちはこっちでトラブルがよく起きる。
酔っぱらったおじいさんが下半身丸出しでベンチに寝てるとか、出稼ぎに来てる外国人が何故か炎天下のロッカーに鮮魚入れて鍵もかけずにどっかいってるとか。
ちょっとボケちゃったおばあちゃんがずいぶん遠方からバスやら電車やらに乗ってここまで来ちゃったんだけど、っていうのを保護したりとか。
もちろん、性犯罪だってその一つですよ。
性犯罪と言っても痴漢とか露出なんですけど。
提携駐車場で車の影から下半身露出したオッサンが出てきたのとっ捕まえたっていうゴツイおじさん。
こういう格好の奴がいきなり胸を鷲掴みにして逃げたんです!と駆け込んでくるお姉さん。
そんな感じですよ。
で、痴漢だの露出だのやるような人ってのはある種の理性が効いてないわけですよね。
性欲とか衝動に対する理性のブレーキが壊れている感じ。
知的障害者っていうのもそういうところがあるんですよ……普通の人と違って、判断能力云々を理由に罪に問われないんでやりたい放題なんでなお怖い。
ある日の夜のことです。
お客さんもだんだん少なくなってきて、ああ今日も何事もなく終わりそうだなあって思いながら仕事してたんですよ。
閉店前にやっておく作業っていろいろあるじゃないですか。
まずはカウンターの中がちょっと散らかってるのを片づけて……とガサガサやってたらね、ダダダダダダダッ!って女の人が走ってくるんですよ。
どうも他のスタッフが運悪く見つからなかったみたいで、こっちをみてあっ!と声を上げる。
なんだろう何かお探しかな、それともトラブルかなあって思いながらいらっしゃいませー、って声をかけた。
そうすると女の人がこっちへ走ってきて、
『○○のとこのトイレで痴漢が出たんです!』
って言うんですよ。
何、痴漢!?
『トイレに入ってる一緒に来てた友達からメールが来て、ドアを開けたら男の人がドアの前にニヤニヤしながら立ってたらしいんです!
個室に入ってこようとしたんで慌ててドア閉めたらしいんですけど、まだドアの前にいるって!』
オイオイオイオイオイオイ!
痴漢っていうかそれ痴漢で止まらん奴だろ!
むしろ強姦まで行くギリギリのラインでかろうじて防御に成功してるやつだろ!!
さあ困った、カウンターには今自分しかいない。
痴漢だの何だのに関しては男性スタッフ数名で向かうように言われているがしかし今近くに見当たらな……
「お客様、何かお困りですかー?」
いたーーーーーーーーーーー!!
おおブッダ、起きてらっしゃったんですね!?
他のお客様の応対を終えて戻ってきた男性スタッフ(経験豊富)にかくかくしかじかつるつるアポジカと事情を説明し、そいつぁいけない!と別件で通りがかった他の男性スタッフ(数年目の若手・ゴツい)を引き連れて現場へ急行。
ニタニタ笑いながらドアを開けようとしていた痴漢(強姦未遂犯)を警備の人とともにとっ捕まえて、警察の登場と相成ったわけです。
これがねえ、スマホ持っててメールとか送ることが出来る年齢の人だったから良かったんですよ。
スマホとか持ってないようなお子さんだったら、って思うとね、ぞっとしますよ。
結局責任能力なしの無罪になっちゃうだろう、ってことでね、被害者の女性と通報してきた女性はカンカン。
母親だっていう人も「知的障害者がしたことだから」で謝ろうともしない。
結局被害者二人は別のところでちょっと事情聴いた方がいいだろうってことでね、奇声を上げながら体動かしてる知的障害者の方は事務所の空き部屋でやることにしてパトカーの方へ行こうってことになった。
しかしここまで事態が進むと自分は帰っていいのか悪いのか。
ドタバタしてて忘れてたけど時計見ると退勤時間すぎちゃってんですよ。
とりあえず私何かすることありますか、って言ったらそんじゃあこっちの従業員用通路開けて、俺らが行くまで番しといてね、残業になって悪いけどって鍵渡されたんですよ。
あ、わかりましたーって鍵受け取って、そこのドアの前で待ってたんですよ。
警察の人が来て、強姦魔(未遂)の知的障害者が通って、スタッフが一人通って、そんで母親がやってくる。
ちょうど店頭から回収して持ってきてた看板の影になってこっちが見えなかったんでしょうねえ、母親がぼそっと言ったんですよ。
「遊んでそうな格好してんだから、つべこべいわずに相手すりゃいいのに……」
ぞっとしましたねえ……。
そういう本音の元に放置してるって話、あるんですねえ……。
時期的に稲川調でお送りいたしました
お盆の無法地帯が近づいてくるなあって思いながらふと周囲見たらね、車いすがずいぶん増えてるんですよ。
車での長距離移動は高くつくから同じ値段で乗れる新幹線とか電車使おうっていう感じなのか、何なのか。
田舎で都市部レベルの環境求めたり、家族の休みが取れたから久々に出かけて羽目を外そうとして常識まで破ってみたり。
今年の夏も、何事もないといいなあ……。