猫は夜歩く。

地方住まいのゲーム好きオタ♀がつらつら。アトラス的なお仕事したい。

U400Sとかいうやべえやつについてレビューをしよう

これはレビュー記事ですがそもそも夜猫はクリスタを活用できるタイプではありません

さて。 マウスコンピューターのU400Sという商品についてちゃんとしたレビューを始める前に、一つ大事なお話を改めて。

世の同人誌サークルには二種類あります。
絵を描く奴らと、文章を書く奴らです。

同人誌サークル民の視点から見ると、多くの場合、クリエイター向けパソコンというのは前者を対象にしています。
絵を描く、モデリングをする、映像を作る。
後ろ二つは特にスペックを食う作業を必要とするために、かつてはそうしたことにアドバンテージを持っていたMacユーザーが多かったと言います。
時代は流れて今やプロユースのMacはとんでもねえお値段がするようになり、ハードウェアの自由が利くWindowsを使ってそういう作業をする人も増加しています。

さて、このビジュアルに訴える作業において、イラスト、マンガを描くという作業は比較的低スペックでもどうにかなります。
クリスタ、メディバンを筆頭にこれらのソフトは歴史の中で最適化を重ね、ペンタブさえあれば割と低スペックなパソコンでも動作するように作られてきました。
なんなら動作環境がほぼ確定するiPadとペンシルを用意すれば、パソコンを買うよりはるかに安価な環境で作業ができます。

加えて視覚的に広告で訴えやすいので、クリエイター向けといえば絵、モデリング、映像の三点セットで宣伝されていることが多いです。

ところで夜猫は後者、文章を書くタイプのコミケ/イベント参加者です。
イベント会場でも地味、広告を打つにしても地味ということであまり目立った訴求はされません。
にもかかわらず、地味にスペックを要求されるということをご存じでしょうか。

これはそもそも『日本語の文章で構成された原稿を出版物にするために使われるソフト』が少ないという点に起因します。

パソコン上で本の原稿を作るために利用されるソフトを、『DTPソフト』といいます。
Desktop publishing software、略してDTPです。
この、経験のない人には聞き覚えのないカテゴリのソフトが小説本サークルには必須です。

商用利用が制限されているということを差っ引いても、MicrosoftのWordは日本語の縦書き原稿を書くという点においては実用に足りません。

ここでFateシリーズを例にとって解説してみましょう。 Fateシリーズにおいてはルビが非常に重要というか、欠かすことのできない存在です。
例えばシリーズの看板でもあるアーサー王の宝具(必殺技)に『約束されし勝利の剣』というものがあります。
作中ではこれに『エクスカリバー』というルビを振ってそちらで読むというように、かっこよくも原稿を作る側としてはややこしい表現方法を取るわけです。 『蘭陵王入陣曲』と書いて『いさましきはかめんのもの、おんようけんびのりょうおうなり』とかいう長いのもありますね。
由来とかイメージとか、そういうものを一つに収めるかっこいい表現方法なわけです。

これをWordでやるとどうなるか。
確かにルビは振れますが、絶対に行と行の間が不細工な感じになります。
教科書や文庫本のようなきれいな配置には絶対になりません。

これを解決してかっこよくかつ読みやすい原稿を作るためにはDTPソフトが必須なわけですが、これ、実は非常に数が少ないのです。

Windowsパソコンにおいて実用レベルに到達しているものは、実質indesignというアドビのソフトしかありません。
ワープロソフトの一太郎もまた同人サークルを明確にターゲッティングしたプロモーションをやってはいますが、これを含めても二種類しかないのです。

さて夜猫は必要な時だけ契約してindesignを使うことで安上がりにあげるタイプだったわけですが、ここでアドビの要求スペックアップの波がやってきました。
必要環境としてはメモリ4㎇、推奨環境としては16㎇以上です。
たかだか文章オンリーの同人誌の原稿を作る程度で16㎇。
鬼のようなスペックアップです。

ここ一年愛用していたraytrektab10インチモデル君ですが、このアップデートを受けてついにindesignが起動しなくなりました。 OSに64bit版を搭載していたばっかりに、普通にインストールした場合に入る64bit版indesignの起動序盤にさえ耐えられなくなったのです。
32bit版をインストールすればどうにかこうにか動いてはくれますが、実質的にindesign使用には耐えられない環境であることに変わりはありません。

Fateジャンルの同人誌でなくても、ちょっとひねった表現をしたいときにはルビは心の友。
フリガナ必須のジャンルに住んでいればそこはこだわりたいポイントなわけで、かといってほかに移住先も満足に見当たらず。
DTPソフトの大半は『フリガナの要らない言語』向けにできているわけなので、小説本サークルの民は実はスペック要求が厳しい生態をしているということになります。

いっそ一太郎に移住しようかしら。

持ち運べるWindowsのお手頃価格の作業環境がない

さてそうなってくると必然的にメモリ、チップに予算をぶち込む必要が出てきます。
近頃ではiOS対応の素敵なアプリが出てきましたが、今回はそれは横に置いておきます。
『メモリ8㎇積んで筆圧4桁対応のraytrektab10インチモデル』の場合、クリスタ側の努力もあって7万円台というiPad級の価格帯で満足のいく書き心地が得られるのはあちこちで評価のある通りですが、こと文章の原稿においては力不足もいいところ。
タッチ方面にステータス限界まで振ってるからね、しかたないね。
かといって電機店のパソコンコーナーに陳列されている同価格帯はほぼceleron搭載4㎇とかいう門前払いどころか門にもたどり着けない有様。
ChromeOSに至っては日本語でDTPできるアプリが存在しない以上スタート地点にも立てません。

そういう意味では『新品を買うなら腹をくくって10万単位の出費を覚悟せよ』というか、例えば出勤中の電車の中、ゲームしないために駆け込んだカフェの席で作業をする環境を整えるためには、まず脱celeron
加えて持ち運べるサイズを要求するとお値段も跳ね上がるという、財布と実用性の間で開催される圧迫祭りど真ん中。

いや、下書き程度ならできますよ?
適当なテキストエディタに下書きをぶっこんでいく段階であれば、もちろんraytrektabくんでも付いていけるんですよ。

文章書きの観点でraytrektabを見た場合、致命的な欠陥はindesignの動作に耐えられなくなった環境だけではありません。
純正のキーボードカバーもまた、致命的な欠陥を抱えています。

まず一つ、薄さを追求するあまり、高速でタイピングしているとタッチパッド誤爆する程度にやわなこと。
入力中の文章を途中で寸断してあらぬところへカーソルがすっ飛んでいくので、気が付くととんでもねえ誤字脱字、いや誤字脱文が発生していることがよくあります。

次にキーボードカバーの構造上、どうにも固定が甘い。
物理端子で接続するという、Windowsbluetooth周りの不具合に対する対抗策を備えてはいるものの、本体そのものの重さに負けてしょっちゅう端子が外れます。

この二つの欠点のおかげでどうにも落ち着いて文章が打てない。
夏の気温に負けて熱が発散しきれないノートパソコンのキーボードの方がまだ快適とかどういうことなの。

そういうわけで、タッチペンですべてを済ませるならまだしもWindowsというOSそのものがそれに向いたつくりをしておらず、ソフトのアップデートによって環境的に苦しくなり、キーボードの作りが今一つという文章書き三重苦を抱えているraytrektab。
それでもメモリ8㎇と価格帯という点においてでかいアドバンテージを有してもいるわけですから、考えれば考えるほど文章サークルのPC選びはいばらの道ですね。

本題:文章サークル民から見たU400Sのいいところ

メモリ16㎇、i7搭載の有難み

raytrektabでアドビに苦しめられた後に触れてみると、実際U400Sは素晴らしい端末だと思います。
必要上どうしても逃れがたいアドビのアップデートにも耐えられる、推奨環境通りのメモリ容量。

indesignユーザーでも余裕ですよ、馬力が違います。

普段から16㎇のメモリをフルに使うようなユーザーばかりではありませんが、いざ入稿となったときに入港するための原稿をするソフトが動かないのではお話になりません。
推奨環境を整えておくのは精神衛生のためによろしい感じです。 小説本は想定外にメモリを食うぞ。
油断していたらフリーズするぞ。
バージョンアップ前でさえ気が付いたらページ数が二段組みで三桁に突入してメモリと戦っていた人間が言うんだ、間違いない。

アドビに置かれましてはもうちょっとメモリ的にダイエットをお願いします。

ギリギリ持ち歩けるサイズ感とキーボード

個人的な考えですが、13インチ、14インチというのは気軽に持ち歩けるサイズの上限に近いと思います。
これを持っていって例えば近所の喫茶店で作業にいそしめるか、という点では、U400Sぐらいまでなら可能であると思います。
近所のミスタードーナツへ持ち込んで開いてみましたが、店の設備の関係でWifiがつかみづらかったこと以外は文句なしです。
(田舎あるある:更新されないWifi親機)

そしてノートパソコンの利点であるキーボード。
WindowsのスクリーンキーボードはスマホiOSを使用しているとあまりに不便な代物ですが、内部配線でつながったキーボードはやはり強い。
筆が乗ってきてそれこそトンプソン機関銃みたいな勢いで指がキーボードの上を走り回って音を立てようとも、余裕でそれを受け止めてくれます。
これについてはノートパソコンであれば当たり前であるともいえるんですけどね。

重量は約1.5㎏、500mlペットボトル三本分とやや重たい部類に入るものの、リュックサックタイプのPCバッグに入れて運べばそれほど気になりません。
熱についても夜猫が試用した限りではそこまで気にならず、快適に文章を打つことができました。

筆圧対応のパネル搭載と360度回転ヒンジのコンボ

360度回転させられる構造をしているため、キーボード部分を反対向きに折りたたんでタブレットのように使えるのがこの機種の最大の特徴なわけですが、これのおかげで『大きくハイスペックになったraytrektab』みたいな使い方をすることもできます。
今でも中古で高値を記録しているvaio canvasの環境を最新に近いところまで更新できるものと考えれば、まだvaio canvasを使っている層、これに興味を持っている人には検討を勧めたい。

仮にメーカーの想定に反して(と言うとちょっと申し訳ないけど)ハイスペックでキーボードも使える液タブ的な使い方をする場合、ペンは完全に消耗品になってしまうわけですが、これについても聞いてみました。
このU400Sの付属となるペン、ばら売りこそしないものの購入者に対してはサポートを提供するとのことなので、追加購入するか修理に出す形になるのだと思います。
他にもWindows inkに対応しているペンであれば筆圧込みで使えるとのことなので、surfaceペン等を使っている人はそちらを使いまわすことも可能になるかも。

U400Sのここが惜しい

クリスタ付けてほしかったやつだこれ

メーカーの区分方針的に致し方ないことではありますが、クリスタのコードがついてれば絵描き的にも加点対象だった。
もちろん、フリーソフトのメディバンペイントなんかを使えばコードなしでも行けるのだが。
実は以前販売していたタブレットの中にも1024段階だったかの筆圧対応モデルがあったりしたのだが、グラボ非搭載の壁の前にクリエイティブ向けの宣伝と装備の対象には入れなかった模様。

正直これそっち向けても売れると思います。

ペンが電池式なのでアマゾンとの親交が深まる

単六電池を使用するタイプのペンである、というのは人によっては好まないポイントかもしれない。

というのも、この単六電池、スーパーとかコンビニではなかなかおいていないサイズなのである。
原稿修羅場まっただなかのときにふと電池切れになって電機屋へ駈け込める環境ならいいのだが、田舎の方へ行くとその電機屋というのがなかなかないのである。
郊外型店舗の困るところは車で来る前提なものだからいったん太い道へ出てしばらく走らないとたどり着けない点ですよ。

特にapple pencilなんかの充電タイプのペンに慣れている人にとっては煩わしく感じられるかもしれないが、そこは買い置きをしておくということで対処するか、アマゾンプライムを使うしかないかも。

物理的にも価格的にも重量級

アップル製品の話題が出たのでその流れでこれも触れておきたい。
iPad系列と比較するとやはり重たいのは否めないところ。
14インチというサイズも相まって、パッと持ち歩いて使うには重いと感じるかもしれない。
仮にこれの進化系モデルが出るとしたら、ワンサイズ落として13インチ級でもうちょっと軽くなってくれると大変うれしい。

価格に関して言えばこれだけの装備を備えて税込み約15万円。
三年保証を付けると18万ほど。
個人的に比較対象にしているのはraytrektabなのだが、wacom oneが五万円以下の価格帯で出てきたことを考えると価格的にためらいを感じるかもしれない。

ただ、そういう用途で使っている身としては快適な作業環境はマネーでビンタして買うものであるというのも実感する。
何しろ世の中には『動画編集のできるi7搭載の新品PCを5万円とか7万円ぐらいで』とかいう正気を疑う問い合わせが存在するので、相場を知らない人にとっては目を疑う価格だろう。

それでも使用した実感としてはこのプライスでこれはアリだと思う。
もちろんraytrektabが絵描き方面にステータス全部振ったある種の到達点であることは否定しないのだが、それ以外の点を求めざるを得ない夜猫のようなユーザーとしては、倍ほどの価格だとしても『indesign使って同人誌を作るタイプのガチユーザー』としては真面目に買い替えを考えるレベルである。

とまあこんな感じで

マウスコンピューターさんからお借りしたU400Sのレビューを終わりたいと思います。

惜しむらくはこの機種、店頭展示している店舗が少ないらしいので、もし興味を持たれた方は展示しているかどうか問い合わせてみてほしい。
ここら辺は店舗の裁量によるのか、どこで展示しているのかはちょっと把握してないらしかったのです。

個人的にはわりと真面目にraytrektabからの買い替えを考えるレベルでお勧めですけどね!
ただイベント会場に持ち込むにはでかいんだよなあ。

以上、年始早々マーライオンになったりしていた夜猫でした。

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